『クラインの壺』(ネタバレあり)

おはようございます、 ura_love_JPNです。今朝は子どもと少しやり合ってしまい、心が折れてます。いや、子どもももうわかってるから扱いが難しい。。


クラインの壷 (新潮文庫)

クラインの壷 (新潮文庫)

 気を取り直して今週のお題「読書の秋」ですが、私が小学校高学年から中学生くらいの頃、一番衝撃を受け、今でも血肉となっているのがこの作品です。

 この作品と出会ったきっかけはNHK教育のドラマでした。

当時NHKはYA層(ヤングアダルト・中高生向け)コンテンツに力を入れていて、その一環として、この作品がドラマ化されました。(って、よくよく考えれば今もか。)ドラマ化の主役はジャニーズで、ジャニーズファンだった家族が見るから、という理由でみはじめたら、何これ、ものすごく面白い。

あらすじとしては、バーチャルリアリティVR)の実現が間近になった近未来、主人公の男子学生が世界そのものを表現する最新VRゲームで遊んでいたら、現実と虚構がわからなくなってしまい…という作品。魅力的な女性がVR/リアルともに登場し、そして現れたり、消えたりする。

読んでいくうちにものすごく混乱してきます、そして最後まで答えが出ません。

ドラマもドラマで非常に重厚なテーマだったのですが、原作はさらに深くて、当時の私はギャーギャー言いながら読んでいました。

当時はインターネットが一般的になり始めたものの、まだファミコンやプレステなどの汎用ゲーム機が娯楽の中心だった時代。そんな時代にVRでゲーム、そしてその最先端で事件が起きて同じ世代の青少年が巻き込まれる、という設定は非常に新鮮でした。(今はものすごくありがちかもしれないんだけどね)

またそのような【ゲーム】に入り込んでしまうことで目の前にいる人たちに対して疑念を抱き始めてしまう、というのも理解できる世界観が構築されていて、【ゲーム脳】という言葉も当時賑わせていたこともあり、そういうこととも関係するのか、しないのか考えたりもしました。

これ、原作小説でも最後まで明かされないのですが、もしもこの世界を誰かが演出していたとすれば本当に壮大で、でもそういう壮大なことがゲームという小道具が一つあればできてしまうかもしれない、というアイデアが恐ろしくもありました。すごい。

またwikiにも結末書いてあるのでネタバレしてしまうと、<今いる世界>がゲームの中なのか、現実の世界なのかわからなくなってしまった主人公が自殺を図ろうとするところで終わるのですが、私はこれを大学時代に精神と身体について考える芸術論で取り上げて教授を誑かしましたw『精神とリアルをつなぐものが身体であり、その身体を壊すことで精神の実在性を確立してる…』とかエラそーに書いてたはず。そういうなんちゃって哲学ができる作品でした。厨二病的かもしれないけど、考える面白さを学んだ作品でした。

作者の岡嶋二人氏(コンビ名)は1990年代にコンビ解消し、1980年代に活躍した作家さんになるはずなのですが、なぜか2005年「このミステリーがすごい!」で『99パーセントの誘拐』が第1位を獲得したSF少し不思議な作家さんです。というか『99パーセント…』もですが、確かに作風は古臭くなってしまっているのですが、現代でも通じるアイデアやデジタル機器類が小道具に使われており、今でもちゃんと面白いところが評価されたんだろうなと。もちろん好みはあると思いますが、貴志祐介とか読めるなら多分イケると思う。

岡嶋二人はなかなか図書館でも見かけなくなってきて寂しい限りだったので、こういうところで地味に広報w

よし、とりあえず仕事に行ってきます!子どもは帰ったらフォローしよう。行きがけにぎゅっとしてきたから大丈夫なはず。

ではでは、行ってきます!